とある抽象 ひと昔まえ。海峡を渡るフェリーにひとりの男がのっていた。男は発明家だった。彼の頭の中は歯車がいっぱい詰まっていて、それらは世界とは関係なしに回っていた。男には妻がいて、彼女は赤ん坊を抱えていた。人生の安寧は諦めていたがお乳は豊か…
独房にひとりの男がいた。独房は壁に囲まれ、床と天上も含めて頑丈な石で出来ていた。男は寝台に腰かけ、壁を凝視していた。それは覗き窓のついたドアある面とは反対方向に位置する壁だった。男は疑っていた。こんな壁は幻で、おれはおれの思い込みの中に閉…
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