猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

短い話

推敲ちゅう

むかし。左翼の学生さんが一人、山に登り山小屋に泊まった。管理人がいて白髭のお爺さん。二人はお酒を飲み政治の話に。長い長い保守政権の時代で、お爺さんは愛国者だった。戦争の話になった。 学生さんは戦乱の時代をくりぐり抜けてきた先人の、話は話とし…

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大富豪の探偵は、穴の開いたコインを指で弾いた。 「では、こうしましょう。もし犯人が自ら申し出てくれたら、この城を買い与えた上で、向こう百年の維持費を提供すると約束します。天文学的な金額ですが、私なら用意できます。有能な弁護士も紹介します。い…

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異世界諺。「マントよりカーテン」 旅人のマントも部屋のカーテンも共に風になびくが、カーテンは遠くに行ったきり帰ってこないという事はない。そばにいる人こそ大切にせよ、という意味で使われる。船の帆よりカーテン、という地方もある。 異世界諺。「横…

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土魔法師の四季春。雪が溶け始める頃。旅の土魔法師は農村に現れ、土を耕す仕事を請け負う。百歩四方の畑の土を掘り起こし、火炎のスクロールを使い焼く。土が乾いたビスケットのようになれば作業終了。土魔法師は銀貨一枚と感謝の言葉を受け取る。夏。旅の…

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雨があがるのを待ち、買い物から帰ってきたら。家がなかった。辺りを見回しても、やはりなくて。更地に、青空を映す水たまりがあるばかり。盗まれた、と思った。 てくてく歩き交番に行くと。お巡りさんはのんびりしたもので書類を作るでもなく、まず鍵屋に行…

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四つ葉のクローバは淋しい。ひとつ見つけると、その近くで。どかどか見つかる。いっぱい、みつかる。五つ葉だって見つかる。そんな株を発見してしまうと、四つ葉の有難味も失せてくる。二十も三十も集めて、夢から覚めたような気分になってくる。沢山もって…

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冬の午後。昼寝から目覚め階段を降りると。玄関に知らない黒い靴があった。持ち主を探したが家中、静かで誰もいなかった。気のせいかと思いつつ玄関にもどると、知らない靴が二足に増えていた。湯船にもクローゼットにも誰もいない。玄関を見ると、黒い靴が…

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山の中。斜めに張られた天幕の下で、鉈を手にマキを割っていた。小雨が降っていて、犬は頭を垂れいる。炎は水蒸気を含み煙ってる。炎の上には釜があって、小さな五右衛門風呂のようだ。草の茂みから、にょろにょろしたものがやってくる。 にょろにょろはタコ…

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探偵は仕事を断った。人が死んでいたからである。探偵は言った。 「殺人事件はいけない、一度、解決したが運の尽き、探偵の身の回りで殺しが始まるのさ、日常的に、息もつかせず、解決を待つ屍体の山さ、名探偵の呪いと師匠は呼んでた」 天使は飛ばない。天…

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訪問者は帰ったが彼は落ち着かず、小説の続きを書く気分にはなれなかった。翌日も来客の影は残っており、シャワーを浴びても料理をしても散歩をしても影が立ち去る事はなかった。作家生命は風前の灯。言葉に出来ないし、したくもない影を殺す話を書かねば。 …

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とある魔術書に。鵺が鳴く夜、猫より魂を戻す方法が書かれていた。猫に魂を入れて窮する者がいた、という事だろう。けれど猫に魂をうつす方法はどこにも書かれてなかった。昔の人にとっては記すほどでもない、よくある事であったのか。猫の瞳を覗き占う術も…

こんな話を書いた

ぼくはポエマー。彼女への恋文がデビュー作となった。勇気を出して手渡した手紙が、彼女の手によって公開されたのだ。残酷な女よ。ひゅー、ひゅー、と囃し立てる級友たち。壁に貼り出されていた便箋を取り戻し、その場で音読してみた。声はひきつり、たどた…

こんな話を書いた

誤解があるようだが。「本書の内容は完璧な形で、目次に要約されれいる」と序文にある。従って目次だけを読んで批判するのも、作者の主張に照らして正当なのである。目次だけで二百頁あまり、本文の方が注釈のような有様で要約といえるか、という事に目をつ…

こんな話を書いた

藤の手入れを頼む。息をひきとる前、父は息子にそういった。息子は思った。彼はこう考えたのだろう。自分が死んでも藤は残る、手入れをしなければすぐに枯れる、四季はめぐり続ける、そこには何の疑問もない。息子は藤を眺めた。鉢植えのわりには大きく見え…

こんな話を書いた

鯨の腹の中は暗く、ゾンビでさえ酸によって溶ける。鯨の腹の中の街の住人の多くは、亡霊である。鯨が塩を吹くとき、亡霊も空に吐き出される。イーハー。多くは虹となって消滅する。鯨の腹の街の住人にとっては、月光さえまぶしすぎるのだ。 未来の春はロボッ…

こんな話を書いた

通りに面した二階に物静かな読書家が住んでいた。時々、読書家は目頭を押さえると立ち上がり、窓を開けて通りを見下ろした。物売りたちの声は面白かった。飴屋に金魚売り、竿竹屋に風鈴売り、焼き芋屋に小指売り。耳障りな声がすることもあるが。読書家はそ…

こんな話を書いた (月が綺麗ですね)

最近、月は調子にのっていた。器量が良くて慎み深く、くわえて賢い愛の伝達者なのだった。三美神を足して三で割らない、ひと柱って感じ。今夜もまた、地上では こんな囁きが木霊してた。 「月が綺麗ですね」 街の明かりが灯りだす頃。丘の上の公園のベンチに…

こんな話を書いた

ミニスカートの彼女が眩しくて、ぼくは目をそらした。右上の宙を見て、それから彼女の目を見て、すごく似合ってます、と述べた。彼女は小首を傾げ、ごめん、といい席を外した。帰ってきて彼女は言った。「ここでクイズ、さっきとどこが変わったでしょう!」…

こんな話を書いた

衰へたる末の空の下、お城のような船は煙を吐きながら、沈みかけていた。あちこち浸水が激しく、補修も追いつかないらしい。でも、ずっとそうなのだった。私が子供のときから。板子一枚へだて。地獄の上の船は、永遠に沈みつつ進む牢獄のよう。 星月夜。外国…

こんな話を書いた

雑踏で振り返った。彼女の香りだった。彼女と過ごした記憶が洪水のように押し寄せてきて、胸がいっぱいになった。ひとつだけ分からない。なぜ彼女は、男性向けの香水を使っていたのか。おっさんの姿をふり返るたび、考えてしまう。 ぼくは手袋を男に投げつけ…

こんな話を書いた

ワン、ワン、ワン。 飼い犬のジョンが家出した。占ってもらおうと町へ出かけたら、繁華街の外れにジョンはいて。占い師をしていた。では手を見せて下さい、とジョンはいった。手を出すとペロリと舐めた。 「お酒は控えるのが吉。塩分のとりすぎにも注意しま…

こんな話を書いた

獏のお腹はパンパンだった。少女の夢は食べても食べても、生えてきた。赤い夢。青い夢。黒い夢。きりがなかった。ついに破裂する時がきた。乾いた音。白煙、もくもく。煙は王子の姿となり、少女を空へと連れ去った。獏はといえば、破裂した勢いで世界一周。 …

こんな話を書いた

犬の王様に呼び出され、料理をすることになった。王様の尻尾は垂れている。はい、と手渡されたのは一本のスコップと長靴だった。曇り空の下。王様の料理は、庭に埋められた骨を掘り出すところから始まる。 恋文を書いたら怒られた。言葉じゃなく行動で示せよ…

こんな話を書いた

桜は巨大な菌類である 猫と私は同じ空間を共にすることは出来ない。猫が私を退けるか、私が猫を排除するか。二つに一つである。夜になると我が家の庭を横切っていく野良猫の話だ。なぜ猫は落し物をしていくのだろう。毎日のようにそれを拾っていると。そんな…

こんな話を書いた

花壇防衛戦 ふかふかの土が盛られた我が花壇は古レンガ仕切られ、丸い石が並べられている。積まれたレンガは城壁で、石は城を守る衛兵のようだ。敵は野良猫。猫の奴も、ふかふかの土が大好きで。隙あらば自らの閑所にせんと闇に乗じてやってくる。正直いって…

こんな話を書いた

作家と世界の崩壊 お茶の時間にも、クマは悩んでいた。久しぶりに漫画を描こうとしたら、ペンが重かったのである。いったい何トンあるのだ、というほどに重く、とても持ち上げる事など出来なかった。一日描かないと、ペンは一グラム重くなり、二日描かないと…

こんな話を書いた

カーネーションを飾った。仏壇の引き出しから古い眼鏡が出てきた。かけてみたら鮮明に手のひらが見えた。試しに新聞を開くと、小さな文字まで読めた。陽だまりで身を屈め、しばらく文字を追い目頭を押さえた。少しだけ度が合っていないようだった。眼鏡を拭…

こんな話を書いた

ごめんなさいごめんなさい、と言って怒られた。謝らないで、と。 「ごめんなさい」 「また」 「ごめんなさい」と口にすると、その事を怒られる。私の卑屈さが指摘されるているのか。奴隷よ、立て、自らの足で、と鼓舞されているのか。 「提案がある。ごめん…

こんな話しを書いた。

労働の勝利 先日、植えたトマトに花が咲き、もう青い実を結んだ。この成果を私は勝利と呼ぶ。電撃的大勝利である。花壇の下には地下六十センチから、七十センチの縦穴を掘り軽石を詰めた。局地的にだが水捌け超良好の地なのだった。地下から出てきた土には石…

こんな話しを書いた。

穴掘り 苛々する事があって庭に穴を掘った。直径三十センチ深さ六十センチほどの穴を。垂直に穿つのはそれなりに大変だ。 深さ三十センチまでは黒土で、スイスイと掘ったが。そこからは青い粘土質の土だった。石に当たっては石を掘り出し、コンクリート・ガ…