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エーベルハイト伯爵のサンザシの木

エーベルハイト伯爵は馬を駆り、森を抜ける。サンザシの枝を一つ折って、兜に挿した。戦に出向く、海を越えて。故郷に戻ると、芽を吹く枝を大地に挿した。伯爵は毎年そこを訪ね喜び、いつしか腕を広げた木の根元に座り、夢に沈む。やわらかなざわめきが思い出させる。かつての日々とあの遠い土地を。

これは社会評論社版「論理哲学論考」80ページからの孫引き。ウーラントというひとが書いた「エーベルハイト伯爵のサンザシの木」という詩だそうである。この詩についてヴィトゲンシュタインの友人は手紙にこう書き称讃したそうな。

他のほとんどすべての詩は……表現できないものを表現しようと企てている。ここではそれが企てられていない。まさにそれゆえに、それが達成されているのです。

結局うえの詩では「表現できないもの」の表現が計らずも達成されているってこと?ヴィトゲンシュタインの返事は以下のとおり。

素晴らしい。そしてそれはそのとおりなのです。