猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を思いついた、半分、下書き「絶対王権」(仮)

絶対王権
 
私は小説を書いていた。もっぱら自分のために。まず白い紙を思い描き、一本の線をひく。すると分割された上が空で、下が大地なのだった。幾つも線をひき道を整備し森を茂らせ、城を建てた。城には王様がいて、なんの理由もなしに領民たちを苦しめるのだった。私は地下牢を石で組み、村からさらってきた娘たちを鎖で繋いだ。拷問のための部屋を用意して、さまざな道具を並べた。部屋のすみには大型の冷蔵庫も置いて、そこには拷問に疲れた拷問者のための飲み物を冷やしておくことにした。たまに愚かな勇者も登場させたが、彼が城を訪れるのは、絶望を味わうためである。
そんなある日、匿名のメールを私は受けとった。優れた作であると思う、けれど作者は登場人物たちについてあまりに理不尽すぎるのではないでしょうか、という内容だった。はじめは無視していたけれど、日に何通ものメールが届くようになって、いささか腹がたってきた。メールの内容はいつも同じ。それは哀れな登場人物たちへの過酷さを、軽減していくべきだ、という嘆願だ。私は返事を書くかわりに、さらに残酷な話を書いた、そして王の口から、こう述べさせた。
「世に物語作者より気ままな者はなし。作中においてその権利は絶対、彼が描きし世は彼のもの。筆の拙さを笑うことは出来ても、その筆をとりあげことはかなわず、またいかなる不条理も非難は出来ぬ。それが気に入らね、と云うのなら、そうそうにページを閉じるのみ」
この台詞のあとにエンドマークをつけ、三日ほど放置したのち、私はその小説をネットから削除した。なぜか笑いがこみ上げてきて、ゲラゲラと私は笑った。そして夜がきて、夢をみた。夢のなかで、メールの主と出会った。なぜだか、そう直感できたのだ。彼はとても悲しそうな顔をしてこう言った。「ようこそ」
見ると、部屋のすみには大型の冷蔵庫があった。私は他にすることも思いつかず、それを開いてジンジャエールを取り出し、ごくりと飲んだ。