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こんな話を考えた 「反論」

反論
 
それはKの心の中で根をはり、もう動かせなくなるまでに成長してしまった確信。この信条を譲ることは自分自身を手放すことだ、というような一線がいまKの目の前にひかれた。線によって分かたれた、ふたつの陣営。ただこの領分を守るためにKが口火を切れば、相手を叩きつぶすか、潰されるか、ともかく争いは全面的なものになるだろう。Kは自分の主張をただ暗示的に示し、相手の譲歩を期待すべきなのかと思案した。会話の糸口はいつも会話の中にあると彼はいった。けれど、悪に対する悪は端的にもうひとつの悪なのであり、悪を口実にして別の悪を正当化することも出来ない、ほどよい知性に恵まれ聴衆を煽動する演説家に対しては、ただ、避けよ、とも。重い思いを胸に抱き、Kはその場を去った。
Kは部屋に帰るとすぐに湯に浸かり、溶けよ、と念じた。かたく凝り固まった自分の殻。