猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を考えた 「掃除」

掃除
 
今朝は呼び鈴に起された。ドアを開けると、白いスーツに白い帽子を被った小男が立っていた。見覚えはなかったが、男は伯父だと名のった。ちょっと変な感じもしたが、暑さに倒れそうだ、お茶を飲ませろ、というので仕方なく部屋に入れた。男は散らかったモノを避けるようにして部屋を横断すると窓枠に腰を降ろし、いかにも暑いという風に帽子をバタつかせはじめた。リクエストされたとおり、湯を沸かし熱いお茶を出したが、伯父だと名のる男は口をつけなかった。かわりにただ一言、汚いな、と言った。まあ、きれいとは言えないだろう、という自覚もあったので、はあ、とぼくはナマ返事した。
「うむ、おまえの母親に言われ来てみたが、これではワシの方が落ち着かん。これで掃除屋を呼べ」と男は言うと懐から財布を取り出し、10万円をぼくに渡した。夕方にまたくる、と言い残し伯父さんは去った。
いきなり臨時収入を得たぼくはどうすべきか考えた。いろいろ考えて、自分で掃除をすることにした。本を本棚にそろえ、ゴミを袋に集め、家具を動かし、掃除機をかけ、雑巾がけをし、窓ガラスも拭いた。だいぶピカピカになった。五万円ぶんくらいは働いただろう、とぼくは思うことにした。五万円ぶん部屋がきれいになり、まだ懐には10万円がある。合計15万円ほど、ぼくは豊かになった気分になった。そして日が傾き夕方になったが、伯父さんは戻ってこなかった。久しぶりに母に電話してみたが、そんな男は知らない、と言われた。葉っぱのお金を掴まされたかな、でも仮にそうであったとしても、まだ5万円分は得だ、と思った。