猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を考えた 「幼名」

幼名
 
姉と二人、口寄せさんの所に行き、三年前になくなった母を呼んで頂くことにした。理由は母の遺品の中から、女学校時代の恋文が出てきたから。生前、母から聞かされていた話とはだいぶ違っていたのだ。これは一度、直接、母に問いあわせ、皮肉のひとつも言ってやらねばなるまい、ということを思ったからである。口寄せさんは見るからに年期の入ったお婆さんで、だいたいの要件を伝えると、あっそ、と頷いた。霊はすぐやってきた。
「ケンちゃん、そんなことより、あなた、いい加減、結婚なさい」
まったく口やかましい霊で一方的にお説教をすると、われわれの話はまるで聞かないまま、帰られてしまった。口寄せさんに、お礼を述べ謝礼を置いて私たちはその場を後にした。
帰り道。おかしいわね、と姉は述べた。ケンちゃんはないでしょう、と。それは私も同感だった。私の名はケンジだが、これは沢田研二のケンジ。母が彼のファンだったからそうつけた。母は私をそのアイドルに見立ててか、ずっとジュリーと呼んでいたのだ。
あの口寄せのお婆さん、間違ったひと呼んじゃったのね、もう、よいお年みたいだったし仕方ないよね、と話した。