猛烈な勢いでメモ ダッシュ

短い話とか 俳句とか

こんな話を考えた 「泡」


 
樹海の奥に眠る深い洞窟だった。その奥底を見定めた者もいまだいないが、洞窟の湖は海にも繋がっているという話もあった。この洞窟には苔がむしていた。苔たちは反射する僅かな光だけで生きていた。この苔はこの洞窟だけに生息する、固有の孤立した種だった。変っているのはその繁殖法で三月の満月の日、いっせいに泡を吹くのだった。雄株の泡と雌株の泡は混ざりあい反応して膨らみ、洞窟をいっぱいにする。そして年に一度だけ吹くという風が洞窟の奥の方から吹きあげ、泡たちは外へと押し出されるのだった。泡が吹き飛ばされた後の洞窟は静寂に包まれる。清浄というよりは、凶暴な空虚さに満たされているようだった、と探検家のNは述べている。