「予告された殺人の記録 」とダチョウ倶楽部の上島さん
- 作者: G.ガルシア=マルケス,野谷文昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1997/11/28
- メディア: 文庫
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「予告された殺人の記録 」は面白い小説でした。婚姻の夜に花嫁が処女ではありません、ということが分かって。それぞれに体面をおもんばかる男たちが右往左往して。花嫁の兄たちが妹をきずものにした野郎を、やるぞ、やるぞ、と村人たちの前で宣言し実際にやってしまいました──というのが事件のたぶんあらましで。本当は誰か止めてくれないかなぁ、と本人たちは思っているかもしれないのに。これはダチョウ倶楽部上島さんの、「押すなよ!絶対に押すなよ!」にも近いものがある!──っていうのがぼくの感想でした。
それで映画も見ました。兄たちは間男?さんをやっつけて刑務所に行って、いちおうの体面を保ちましたが花婿さんはずっとお酒ばかり飲んで。そのあと何年も何年も家に引きこもってしまいます。その元花婿さんに、元花嫁は手紙を書きます。たぶん相手は読まないだろう、ということが分かっていても、毎日、毎日、だんだんその手紙は彼への手紙というより、自分自身に語りかける日記みたいになってきますが。遠い場所にいる、そして手紙を開封もしないだろう相手がいることは良いことだと思えはじめて、ちょっとだけ朗らかになってきます。
それで映画では、ある晴れた日の午後。元花婿さんは、元花嫁さんの家の庭を訪れるのです。彼は彼女が気づくように、未開封のままの手紙を、庭のあちこに置いていきます、びっくりした元花嫁さんは、チーズにひかれる漫画の鼠みたいにその手紙をひろっていきます。そして、たどりついた場所には元花婿さんが笑って立っていて、ふたりはまた恋人どうしみたいに見つめあったりするのでありました。映画おわり。
ここでぼくは考えます。元花嫁さんが書いた手紙には謝罪の言葉が埋まっていたはず。けれどそれが日課になるにつれ、恋文に近づき、日記に近づき、チラシの裏に近づき。実際のところ相手もその手紙を開封すらしていなかったのだから文面の内容はなにも伝わっておらず、これは一人ごとでしょう?でも、毎日、手紙を出す、ということは何事かではあった、と理解してよいのでしょう。そしてぼくはこうも考えました。結局、最強のラブレターとは。最終的には物量作戦なのかもしれないな。
ちょっとまえ、はてなに書いた感想。