猛烈な勢いでメモ ダッシュ

短い話とか 俳句とか

絵日記

夏休みも終わろうとしている8月の末。靴をはいたぼくに姉は言った。「確かに図書館には新聞がとってある。新聞をみれば、その日の天気が分かる。だから絵日記の空白を埋めるために図書館に行くっていうのは分かる。だがな、弟よ。そんなにリアリティにこだわらなくても、大丈夫だ…ぶっちゃけ、先生もそんな細部は気にしてないし、見ないと思うぞ」。ぼくは「分かった」と言って図書館に向かった。何が分かったのか、よく分からないが、いい返事をしないと姉はすぐに怒るから。図書館は涼しかった。大きな新聞をめくるのは、めんどうなあ、と思っていたら、なんと、赤いマジックで描かれたお日さまマークと、黒いマジックで描かれた雨マークが、壁に貼り出されているではないか。それは夏休み中の天気を表すものだった。すごくありがたい。ぼくは天気を日記帳に書き写した。図書館のひと、ありがとう!
ぼくは机のひとつに陣取って、天気の埋まった日記帳を眺めた。次はその日、何をしたかを書くだけだ。実際に何をしたかを思い出すなんて論外だ。なぜって、とっくにぼくはそれを忘れたから。姉のアドバイスに従おう。3つのパターンを考えた。「プールに行きました」と「スイカを食べました」と「お昼ねをしました」だ。このみっつを繰り返し書いておこう、って思った。でも書いているうちに飽きた。先生は空欄が埋まっていれば、怒らないのだろう?そして日記はスカスカでなく、密であればあるほど良い。なんかそんな気がする。「8月1日。はれ。ぼくは市営プールで河童に出会った」ことにした。
青い体の河童は脱衣場で、ひからびていた。頭のお皿にペットボトルの水をかけたら元気になった。河童は言った。「これはスイスの水ですね。スイスの水は特別に河童を元気にします。ありがとう」……このあと河童は衝撃の事実をいって、ぼくを冒険へと誘う。世界は滅亡の危機にあったのだ!説明はこう。地球は空洞で、内側地球はお湯でいっぱいの温泉世界なんだけど、最近、水が減ってきたらしい。地球の真ん中の真ん中には地球内太陽があって、それが温泉の元なんだけど、このまま水がへると、お風呂の空焚き状態になって、とても危ないらしい。河童によると、地上の人間がたくさん温泉を掘ったのが原因らしいけど、それだけじゃなくて、闇の住人が企みがあるらしいのだ。そして難しいのは、闇の住人の助けを借りないと、オズラが動かないのだとか、オズラというのは巨大ロボの名だ。
……ぼくはこのへんまで一気に書いて、ひと息つく。もう8月22日まで書いてしまった。この日は、あるえっちの誕生日だったと思い出した。冒険を中断して、あるえっちに誕生日カードを送ったことを書いた。しかし、むずかしい。絵日記が終わるまでに世界を救えるのか、ぼくは心配になってきた。