こんな話をかいた
- 昔の人はお腹を割って話したらしい。当時は人の魂もお腹の方にあったのだ。やがて人は胸を叩き始めた。胸に手をあて考え、痛むのも胸だった。さらに時代は下り人は頭で考えだし、頭を痛めた。近未来には外部記憶装置を叩き始めるんじゃないかな?
- 近所の猫たちを煮干しで集め、忍耐づくボイストレーニングをして幾星霜。やっと猫たちは歌いだした。春がくれば月下に響く"イパネマの娘"。途切れ途切れに。世代をこえてゆけば、いいな、って思う。
- 「キモッ」と言われた。気持ち悪い、と口にするのさえもう嫌だ。そちらとこちら。この出会いが瞬間的なものに終わりますように…ああ気持ち悪ぅ…という言葉さえ圧縮し最速で射出しませう…って具合に、ただ「キモッ」と僕は言われた。君の「キモッ」はこの腹を貫き、僕は血みどろ。
- 眠れない夜。クローゼットを開けると河童がいた。相撲をとれと言う。バカめ……と思いつつ猫だましして櫓に投げつけてやった。負けた河童は頭の皿に胡瓜をのせた。その一本に手刀をきり、貪り喰った。うまかった。
- 眠れない夜。クローゼットを開けると、気持ちよさそうにバクが寝ていた。なんとなくムカついた。蹴りを入れ、すぐに扉を閉めた。