2012-03-20 こんな話をかいた 短い話 彼のことはうまく説明できない。ぼくの言葉を逃れる。かろうじて「……になった男の話」として曖昧な方角は示されはするが。指さすことは出来ない。その存在はとても危うく、ぼくらの視線によって滅ぶ。 ブックハンターは本のゲートをくぐり中で猟をする。本の中にも本がいて蝶のように飛んでいる。その一冊を捕まえ、また中に入る。幾つも本をくぐり足元がデジャブで霞んだら危険な兆候だ。猟師は立ち止まり、呪文を唱える。「深淵。深淵。深淵は良いものだ」