読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

猛烈な勢いでメモ ダッシュ

短い話とか 俳句とか

ちょっと書きなおした 

クマとは呼べない

森の公園に行ったら、滑り台の所にクマが寝ていたので言ってやった。「おい、クマ、邪魔だよ」クマは返事をしなかった。美しいまでのスルーぶりだった。家に帰って猟銃をとってこようと思ったほどだが。クマはゆっくりと空を見上げ、こう言うのだった。
「クマとはなんだろう。クマとは人間が勝手につけた呼び名に過ぎない。クマと呼びかけられて返事をする事は、相手に同意を与えることだが。これは私の固有性、自尊心を傷つけることだ。いささかムッとする。と空に向かって言おう」
めんどくさいヤツだな、と思いつつぼくは言った。「じゃなんて呼べばいいの」クマにしか見えない、クマのようなヤツは、相変わらずそっぽを向いたまま、こう言うのだった。
「小さいヤツの声が聞こえたような気がする。しかし無礼な響きだ。小さいヤツは、自分からは名乗らず、相手の名を尋ねているかのようだ。そして互いに名前も知らない相手に向かって、そこをどけ、といったことを謝りもせずに、私の名前を尋ねているかのようだ。こんな無礼者は信じられないし、やはり存在すらしていないのだ……と空に向かって私は言おう」
ぼくはため息が出た。だがクマにしか見えないけど、クマと呼ぶわけにもいかないクマみたいなヤツの言うことも、もっともだ、と思ったので。「ごめんね」とぼくは謝った。すると、クマみたいなヤツはやはり空を見たままこう言うのだった。
「また小さいヤツの声が聞こえた気がする。だが私はずっと空と話してきたつもりだ。ここで小さいヤツに返事をすることは、空と私の関係をひとつの方便として虚しくするもののような気がする。空と小さいヤツを天秤をかけ、その存在の重さを計れば……」
 
ぼくも空に向かって語るべきだろうか。そうしたら空を経由して。クマにしか見えないけど、クマと呼ぶわけにもいかない、クマみたいなヤツと話すことが出来るのもかもしれない。あるいは家に帰るか。