2015-02-09 こんな話をかいた 短い話 梅の木の下を歩いていたら、向こうから人がきて、よく知っているシルエットなのだった。鳥打ち帽をかぶり、背はひょろりとして、眼鏡をかけている。顔も知っているとおりだった。頬はカミソリで落としたようにこけ、どことなく知らんぷりしてて意地悪そうで。実際、意地悪だった。十年以上も前に、お亡くなりなった方なのだった。お葬式にも行った。それは正しく過去形で語られるべきような影。よく似た人もいるものだなぁ、と思った。 「世界一、大好きな、お母さん」……とは迂闊には言えない。 千人の母が、ぼくにはいるのだ。