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猛烈な勢いでメモ ダッシュ

短い話とか 俳句とか

こんな話をかいた

短い話

 詩集

 古本屋に立ち寄って一冊を手にとった。軽い装丁の詩集。知らない方がよんだ詩を、読むのが好きなのだ。
 幸運なことに?……その詩集は感じ良かった。なんとなくだが詩人さんが住む部屋の広がりのようなものが感じられた。間取りとかは分からないけど。机があって、テーブルがあって、花瓶があって、カーテンが揺れていて、窓の外には星空がひろがっていて、土星が異様に近い。ちょっと、いい感じ。部屋を出ればきっと、私の知らない通りに出るだろう。
 
 あとがきを読むと卒業の記念に、と書いてあった。へえ、と思いつつ。奥付を見ると、印刷所の住所も書いてあった。そして思った。この印刷所は知ってるかもしれない。っていうか、うちの近所なのだった。だんだんイヤな予感がしてきた。
 
 ってことは、ここにある卒業とは地元の※※※大学のことだな、って推察された。思うに詩人さんはこの詩集を少部数印刷して、親しい方に手渡したのだろう。受け取った方のひとりが、どうした経緯かは分からないけど、この古本屋さんに持ってきた。これらはぜんぶ、ご近所で起きたことだ。本の発行日から日付も分かる。一年前。
 
 われにかえり、まわりを見た。イヤホンをつけた人が、黄色の本を読んでいた。けれどこの本を書いた詩人さんが、そこにいても何の不思議もないのだ。詩集を棚に戻し店を出た。私が暮らす街の、いつもの通りに雨が降っていた。