猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を書いた

鯨の腹の中は暗く、ゾンビでさえ酸によって溶ける。鯨の腹の中の街の住人の多くは、亡霊である。鯨が塩を吹くとき、亡霊も空に吐き出される。イーハー。多くは虹となって消滅する。鯨の腹の街の住人にとっては、月光さえまぶしすぎるのだ。
 
未来の春はロボットが売っていた。男はロボットを座らせると、朗読をはじめた。
「夕日の燃える平野で詩人の群れが死んでいった。車輪にひかれ、ゆっくりと、あるいは速やかに。ああ。だが詩人でなくとも死ぬのだ。ブースター点火。加速に成功すれば。車輪から逃れるものも現れる。詩と人が分離され。人は死に。詩はその先へ」
ロボットには盗聴器が隠されており秘密の組織が聞き耳をたてている、というのが彼の信念だった。
 
月がのぼっていた。彼女を見れば変わらぬ笑顔で、ほっとした。こっそり私はこの街を憎んでいたが、彼女は世界とも仲良しで。それが、つらくもあった。たぶん私は彼女になりたかった。
「へえ。私の笑顔はうそよ。そう育てられたから、笑ってるだけで。最近はその薄っぺらい仮面すら重くてね」
びっくりした。そのチープな薄皮を一枚ちょうだい、と思った。
 
朝。はじける音がした。庭に出てみると椿の横に白い煙が浮かんでいて、その下に帽子をかぶった小人さん達が整列してた。赤い帽子、白い帽子、青い帽子。また、はじける音がして、かけっこが始まった。最初の音は花火だったらしい。
 
私たちは立ち上がり、それぞれの星を指さした。方向は、ばらばらだった。私たちを代表して私がいたわけではなかったし、共通の私がいるはずもなかった。私たちが認めていたのは各々の足元、よってたつ平面の方だった。
 
銭湯の富士は涅槃を表している。だから湯気の向こうの富士を仰ぎ見て、極楽、極楽、と呟くのも尤もなことである、と雑学の本に書いてあった。私の話をすると。近所の銭湯には公園の絵が描いてあった。「グランド・ジャット島の日曜日の午後」という題名を知ったのは大人になってからである。