猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を書いた (夢おち)

小舟で、うつらうつらしていたら。後頭部から水に落ちた。気泡がのぼっていき、湖面に映る月は遠ざかっていった。なぜこうも体が重いのか。そのまま眠りたかったが。息苦しさに目を覚ました。私の胸の上でクマが寝ていた。
 
夢の中で、すべては道であるとクマは説いていた。太く濃い道もあれば、細く薄い道もある。道なきところを歩めば、それも道になる。海原をいく船の後のすぐに消えちゃう泡も道である。もぐもぐ。この有難い道話は、キャラメル一個で得た。
 
嵐の朝。王よ、と私は呼びかけた。
「これなるは蜂蜜飴。幾万の蜜蜂どもが集めし花の蜜、養蜂家のおじさんが遠心分離機にかけ零れし琥珀の輝きを型に入れ固めし逸品。どうぞ、をお口に」
閉め切った暗い台所でお茶を飲んでいると、口をもぐもぐさせたクマがやってきて言った。
「反乱軍に包囲された城の玉座に座っている夢をみてた。もうダメかも、思っていたら魔法使いがきて、宝石を口に入れろと教えてくれた。目を覚ましたら口の中に蜂蜜飴があった。脱出できて良かったよ」
 
うなされているクマの口に、キャラメルを放り込んだら。もぐもぐと口が動いた。面白かった。台所に行きお湯を沸かしていると、寝ぼけ眼のクマがきて、不思議だ、と言った。
「学校に行く夢を見てたら、そこはお菓子工場で工場長の先生がバター飴をくれた、目を覚すと口の中にあったのはキャラメルだった、不思議な事もあるものだ」

クマの口に、またキャラメルを放り込んだ。もぐもぐして、面白かった。台所でお茶を飲んでいると、枕を抱いたクマがきて、不思議、といった。
「刈った先から生えてくる雑草と格闘していたら、後ろから死神がきて、いきなりキスをされた。固く冷たいキスだった。でも、もぐもぐしてたら、柔らかくなってきて。目を覚ますと、口の中にはキャラメルがあった」
 
クマの口が、もぐもぐしてた。キャラメルも切らしていたので、何も放りこまず、台所でお茶を飲んでいたら。半ば眠っているクマがやってきて、こう言った。
「拷問の学校に行く夢をみてた。入り口には、やっとこを持った石像が立っていていた。知らない人たちばかりで君を探したけど、どこにもいなかった。でも目を覚ましたら、ここにはいた。よかった。ところでキャラメルは持ってない?」
 
南の島で釣りをする夢をみていたら。クマがきて私の手を握った。眠りを邪魔されて不機嫌に寝返りをうつと。クマは雄々しくこう言った。
「さびしくて、きみが泣いてるんじゃなかいか、心配になって」
寄せては返す眠りの波打ち際で、私はこたえた。
「魚が釣れたら、また来てください」