猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

2018-11-14から1日間の記事一覧

こんな話を書いた

山の中。斜めに張られた天幕の下で、鉈を手にマキを割っていた。小雨が降っていて、犬は頭を垂れいる。炎は水蒸気を含み煙ってる。炎の上には釜があって、小さな五右衛門風呂のようだ。草の茂みから、にょろにょろしたものがやってくる。 にょろにょろはタコ…

こんな話を書いた

探偵は仕事を断った。人が死んでいたからである。探偵は言った。 「殺人事件はいけない、一度、解決したが運の尽き、探偵の身の回りで殺しが始まるのさ、日常的に、息もつかせず、解決を待つ屍体の山さ、名探偵の呪いと師匠は呼んでた」 天使は飛ばない。天…

こんな話を書いた

訪問者は帰ったが彼は落ち着かず、小説の続きを書く気分にはなれなかった。翌日も来客の影は残っており、シャワーを浴びても料理をしても散歩をしても影が立ち去る事はなかった。作家生命は風前の灯。言葉に出来ないし、したくもない影を殺す話を書かねば。 …

こんな話を書いた

とある魔術書に。鵺が鳴く夜、猫より魂を戻す方法が書かれていた。猫に魂を入れて窮する者がいた、という事だろう。けれど猫に魂をうつす方法はどこにも書かれてなかった。昔の人にとっては記すほどでもない、よくある事であったのか。猫の瞳を覗き占う術も…

こんな話を書いた

ぼくはポエマー。彼女への恋文がデビュー作となった。勇気を出して手渡した手紙が、彼女の手によって公開されたのだ。残酷な女よ。ひゅー、ひゅー、と囃し立てる級友たち。壁に貼り出されていた便箋を取り戻し、その場で音読してみた。声はひきつり、たどた…

こんな話を書いた

誤解があるようだが。「本書の内容は完璧な形で、目次に要約されれいる」と序文にある。従って目次だけを読んで批判するのも、作者の主張に照らして正当なのである。目次だけで二百頁あまり、本文の方が注釈のような有様で要約といえるか、という事に目をつ…

こんな話を書いた

藤の手入れを頼む。息をひきとる前、父は息子にそういった。息子は思った。彼はこう考えたのだろう。自分が死んでも藤は残る、手入れをしなければすぐに枯れる、四季はめぐり続ける、そこには何の疑問もない。息子は藤を眺めた。鉢植えのわりには大きく見え…

こんな話を書いた (夢おち)

小舟で、うつらうつらしていたら。後頭部から水に落ちた。気泡がのぼっていき、湖面に映る月は遠ざかっていった。なぜこうも体が重いのか。そのまま眠りたかったが。息苦しさに目を覚ました。私の胸の上でクマが寝ていた。 夢の中で、すべては道であるとクマ…

こんな話を書いた

鯨の腹の中は暗く、ゾンビでさえ酸によって溶ける。鯨の腹の中の街の住人の多くは、亡霊である。鯨が塩を吹くとき、亡霊も空に吐き出される。イーハー。多くは虹となって消滅する。鯨の腹の街の住人にとっては、月光さえまぶしすぎるのだ。 未来の春はロボッ…

こんな話を書いた

通りに面した二階に物静かな読書家が住んでいた。時々、読書家は目頭を押さえると立ち上がり、窓を開けて通りを見下ろした。物売りたちの声は面白かった。飴屋に金魚売り、竿竹屋に風鈴売り、焼き芋屋に小指売り。耳障りな声がすることもあるが。読書家はそ…

こんな話を書いた (月が綺麗ですね)

最近、月は調子にのっていた。器量が良くて慎み深く、くわえて賢い愛の伝達者なのだった。三美神を足して三で割らない、ひと柱って感じ。今夜もまた、地上では こんな囁きが木霊してた。 「月が綺麗ですね」 街の明かりが灯りだす頃。丘の上の公園のベンチに…