猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を書いた

1。窓だけの家に住んでいる。建築家だった父が設計した。想像を絶する家だ。すごく暮らしにくい。
  
2。窓の外には一本の木が茂っている。窓枠を額縁として眺めれば、四季折々の絵画にも見える。花が咲く。葉が色づく。実がなる。ときに、ぶら下がった人がいて、こちらを見てる。
 
3。窓を見上げると、彼女がいる。彼女は物憂げに燃える空を見て、こちらを見てない。革命が起きた夜、ぼくは塀をよじ登りその窓に飛び込んだ。そして気づいた。窓は恐ろしいほどの奥行きをそなえていた。窓の途中にいて息が出来なかった。向こう側に彼女が見えた。相変わらず、苦しむぼくを見てない。
 
4。夜中、コツコツという音で目を覚ました。窓を開けると、顔色の悪い人がこちらを見ていた。「ここは窓です、玄関におまわり下さい」といい、ベットに戻った。三階の窓を叩くとか非常識だ。あとは一階の住人が、なんとかするだろう。
 
5。日が落ちて、家々の窓に明かりが灯った。小さな庭。料理の匂い。子供らの声。ときに空の瞬く星々よりも、遠くに感じる、四角い窓。
 
6。瞳が心の窓というなら、ぼくはそれを閉じる。風が鎧戸をうるさく叩く。
「眠るな、眠ったら、死ぬぞ!」
 
7。窓を開けると窓が見えた。窓また窓の街が暮れて、空には星がのぼった。あの星々もまた窓で。闇に穿たれた光の向こうにもそれぞれの暮らしがあり、ひとつの死体の傍らでは八本足の探偵が、推理を始めていたり、
 
8。浴室の窓枠で蜂が死んでいた。蜂はどこから入ったのか。きた道を引きかせば、よかったのに。蜂は目の前の明るさの方に突進を続け、息絶えたのだろう。犯人は、硝子窓。
 
9。彼女は窓を開き、風に向かって叫んだ。……ホーホー……という呼びかけに、幻の軍勢がつづく。その髪は、はためく旗だ。隣の家に明かりがつく。何と言っていることやら。大声は嫌いだ。殺意が芽生える。頭にきたので、私も叫んだ。窓に二人ならんで。……ホーホー……
 
10。鋭角な丁字路にたつ、三角の家はまるで船だ。往来をいく人や自転車や車を突っ切って進む。夜に見ると、とりわけそんな印象が強くなる。でも残念なのは、窓が丸くない。