猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を書いた

衰へたる末の空の下、お城のような船は煙を吐きながら、沈みかけていた。あちこち浸水が激しく、補修も追いつかないらしい。でも、ずっとそうなのだった。私が子供のときから。板子一枚へだて。地獄の上の船は、永遠に沈みつつ進む牢獄のよう。
 
星月夜。外国人墓地で幽霊と出会った。目があって冷や汗。青い目の足の長い幽霊だった。なにやら異国の言葉でまくしたててきた。叫び出したくなるのをこらえ、語学の得意な友人に電話し、通訳をたのんだ。
「彼はなんて言っているの?」
「あなたは神を信じますか?だってさ」
 
唐傘お化けと出会った。水たまりを器用に避け、片足で跳ねていた。あの傘の中はどうなっているのか気になり、ついていくと小高い山の上で。沢山の傘たちが集まっていた。待っていたのは風だった。一斉に開いた傘たちは上空へと上ると、風を抱いたまま遠くへと流されていった。呆気にとられ落下傘奴の内側に注目することを、すっかり忘れてた。残念。
 
カワウソのごとく資料を広げ、先生の伝記を書いていた。先生は先生としか呼びようがない。冷淡な頭文字など使いたくないし。物音がして。シャベルを手にした。月のしたで、先生の後頭部をたたく。緑色の毒をはくから、後ろからやる方がいいのだ。何度目だろう。先生、お墓に埋め戻すこっちの身にもなってくださいよ。
 
新しく出来たスーパーに行ったら店員さんに、こんにちは、と挨拶された。思わず、こんにちは、と返した。店員さんと挨拶する習慣もあまりなかったので、少し新鮮だった。知らない人と挨拶するコツは、隣に小さな子供がいるって想像することだ。こんにちは、って挨拶されたら何てお返事するの?って子供に話かけ、私も言うのだ。こんにちは。
 
小山に登り星をひろった。ポケットに入れたくなくて、遠くに投げた。積み木の街を掃く、ほうき星。月はお化粧に忙しく、それはぼくのためではなかった。だから?あの笑顔はウソでした、といわれても。傷つくのは間違いでした。思えば先月の夕暮れには、秋の風を探してた。
 
男と女がケンカした。男は包丁をとると、ニンニクとイタリアンパセリを刻み、パスタをゆではじめた。
ふたつの皿に盛られたペペロンチーノ。料理は無言の2人の間で冷めていった。男はフォークをとると、ひとくち食べて涙ぐんだ。「おいしい。君への愛情が入っているからだよ」
女はペペロンチーノをにらみつつ思った。げせぬ、まるで私の方が悪人みたいだ。
 
夢魔をたずねて、胸の奥の迷路を歩き、色も濃くなれば姿形もあてにはならず、驚くには値しない気もしたが、寝台にいたのは壺に住む蛸だった。蛸は虹色のペンを振り、匂い立つ花嫁の行列を召喚して私を、ぽぉ、とさせた。でも話をさせれば床屋談義をはじめる、気のいい蛸なのだった。