永い夜
- 作者: ミシェル・レミュー,森絵都
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/05/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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横に細長い本で、本のつくりも独特なら、イラストも独特。内容は永い夜に誰でも?ふと考えてしまうようなこと。世界にはてはあるのかしら、とか。もしも自分の体をとりかえられるなら、とか。天国には死んでしまった人がみんないるなら、その大勢のなかから私は大切な人をみつけられるかな、とか。……月並みといえば月並み、とりとめもない、といえば、とりとめもない言葉が、線画と一緒に並んでいる。ことばは短いし、絵もそのことばが描くイメージをさっと指し示すだけの感じなので、次つぎにページをめくることができる。ぱっ、ぱっ、ぱっ、と、ページをめくるのが楽しい本、ともいえるかもしれない。ぼくが面白いなと思ったのは、洪水のような問いの連続から顔をあげて、ふぅ、と息をつぐようなところ。
本の後半、「死んだらなにもかも消えて『無』になるとしたら──?」と自問しあと、主人公はベットの上で飼い犬と見つめあい、次のページでは、無言で階段をおり。またページをめくると、冷蔵庫を開いたりしている。そんな場面がイラストで示されるってことだけど、ページにはひとこと
おなかすいた!
とあるだけなのだった。おかしい。
主人公の渦巻く想念を絵にしたような、いわば観念的なイラストとは別に、主人公が住む家や家のまわりの樹や畑を描いた風景も2ページ見開きで描かれてあったりもして、それを見るとなんとなく、止めどない観念の小休止みたいで、なぜかほっとしたりした。
宇宙は不思議、このことについては異論はないですよね、みたいな展開のあと、「そしてやがて朝が……」がという言葉が刻まれ、主人公と犬は寝てしまう。嵐のような風も吹いた夜はあけ、彼女の住む家も朝日に照らされる。
いわば地の文のような、そんな風景画が描かれて、この本は終わっているのだけど。これは主人公が眠っても、あるいは死んでも、家も畑も、太陽もなくなりはしません。それは信頼しても良いこと、ってことを伝えているような気もした。