猛烈な勢いでメモ ダッシュ

短い話とか 俳句とか

「お気に召すまま」

この話に登場するジェイキスっておっさんがけっこう好きだ。憂鬱な人なんだけど土星の下でも愉快な皮肉を機関銃のように乱射して、まるで悪びれない。「世界が一つの舞台、そこでは男女を問わぬ、人間はすべて役者に過ぎない、それぞれ出があり、引込みがあり」……という台詞がたぶん一番有名なんだろうけど。
ぼくが面白いなと思ったのはアーデンの森でタッチストーンに出会ったあと、この道化を「尊敬すべき阿呆」と呼び「ああ、俺も阿呆になりたい!なんとしても斑の服を手に入れたいものだ」と公爵の前で述べたあと、いやそれより「風の如き自由の特権」「好む相手に気ままに吹き附ける」許しが欲しい「それこそ阿呆の持ち前」というくだりである。以下は新潮文庫のP66〜P67からの引用。

たとえ世間一般の奢りを責めたからといって、特定の個人を攻撃したことにはなりますまい?……(中略)……また私が都会の女は身分不相応にも王女の着るような高価な衣装を身に附けているといったとする、が、私が都会に住むどの女を特に名指ししているのか、それは誰にも解りますまい?一体、どの女が名乗りを挙げてそれは私の事だと申出ましょうか、その女のすぐ隣の家にも同じような女が住んでいるのに?あるいは身分の賤しい男が、てっきり自分の事を言われたのだと早合点して、「おれの一張羅はお前に買ってもらった訳ではない」などと言い出すかもしれません、が、それこそ反ってこちらの言葉に乗って自分の愚かさを暴露してしまう事ではありませんか?そこです!──これは結局どういう事になるのか?さて、一体どの点で私の言葉が相手の名誉を傷附けたか、一つ考えてみましょう、もし私の言った事が先様の身に憶えのあるものなら、これ即ち身から出た錆、悪いのは御当人です、逆に、全く身に憶えのない事なら、何の事は無い、手前の非難は宙に舞う雁の如し、どこの誰にも当たり障りがないという事になります

ジェイキスさんの述べていることはもっともだ、と思う。そしてこれは、あてこすり、仄めかし戦術の一般的説明にもなっていると思うのだ。