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神無月出帆

旅に出るなら10月、というのが家訓なのだった。母は息子に言った。「ゆけ、とび丸。汝、放たれたる矢。旅立ちのときぞ」
とび丸は名前のとおり丸い子だった。とび丸は一本道の向こうを指さす母を見上げ、はい、と答えると、ころころと歩みだした。峠の道。歩みだした一歩目には日だまりがあって、秋なのだった。でも日差しはすぐに遮られ暗くなり、まるで冬。緩やかな坂を上りきるとまた日が射して、そこは春。さらに一歩踏み出すと、海が見えた。夏だ。急な視界がひろがりに、とび丸は目を細めた。空と海の境目は滲んで見えた。とび丸は、振り返った。そして今きた道を一気に駆け下り、母と感動の再会をはたした。とび丸は言った。
「母上、海を見てきましたぞ。潮風にあたり、遠くに船も眺めました。なかなかものでした」
母は息子を抱き上げると、うん、うん、と頷き。たいした大冒険であったなぁ、と言った。

このまえ。ハイクのh:keyword:超短編に投稿した話。