読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

猛烈な勢いでメモ ダッシュ

短い話とか 俳句とか

こんな話を書いた

短い話
固定電話の風景

沢山の黒い靴。お葬式で家族が集まっている。
買い物を頼まれて外に出かけようとすると、自転車がない。邪魔だったから裏の空き地に置いてきたよ、と姉が言う。勝手口から外に出る。空き地というより荒れた畑で自転車もない。姉は肩をすくめる。畑を横切り小道を迂回して広い通りに出ると、真新しい自転車屋があってお兄さんが帳面をつけていた。狭い店でピカピカの自転車は壁にぶら下がっている。ぼくは事情を話し自転車の行方を尋ねる。お兄さんは不機嫌そうに、知らないよ、って言う。要領を得ないのだが彼も最近、引っ越してきたばかりらしい。隣は紙の問屋さんで事務所は古い。畑の持ち主の家は少し離れた所にあるらしく、連絡先のメモを書いてくれた。

家に帰ると、親戚のおじさんが電話を使っていた。ノートを見ながら仕事の話をしてる。ノートには沢山の紙切れが挟まっていて、ずいぶんと分厚くなってる。台所では料理の準備がはじまっており食器の音がする。自転車はどうなった?と聞かれる。ウンと生返事をしておじさんから電話を受け取り、メモにあった番号を見ながら、かけてみるが繋がらない。
小さな子供たちが集まってきて、電話の横で勉強をはじめる。広げているのは平仮名の練習帳だ。大きな文字。画用紙に落書きをはじめる子供もいる。もう一度、電話をしようとしてメモを落とす。知らない別のメモも拾う。住所と電話番号が書いてある。おじさんのノートから落ちたものだろう。
ともかく電話。けれど繋がらず……間違ったかな?……と思う。メモにある番号を見ながら電話するだけなのに、だんだん心もとなくなってくる。子供らは五月蝿く……いつまで電話使っているの?……という声が台所から響いてくる。……はーい……と返事はするけど電話は繋がらない。やはり間違った番号で電話してるのか。さらに不安になる。姉がきて言う。……電話も出来ないの?……ぼくがタメ息をつくと、彼女は眉をひくひくさせる。凄く外に出たくなった。