猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を考えた 「くりごと」

くりごと
 
雑草の生い茂る空き地を抜けると、その庭はあって、半ば朽ちかけたベンチには、気難しそうな老人が腰掛けており、いつも遠く海を見ていた。話かけると案の定、不機嫌そうに首をふり、そんなことはくだらないと、くりかえす。
「いいかい、小僧、よく聞きな。わしの経験からいって、亡霊なんていやしない。仮に亡霊なるものが存在するとして、なぜそんなものに興味を持つ必要がある。生者には生者の、そして死者には死者の領分があるんじゃないのかね。死者とは死んだ者のことだろう?その死者が死んだあとにも、生者の領分に口を出すというなら、それは死者が間違っている。間違った者のいい分など、わしは知らん。どうせ亡霊どのの云うことなど、未練がましい不平に決っている。くりごとさ、そんなものは」
私は老人の言葉に頷いた。しばらく私も海を眺め、やや大げさに突然の訪問を詫びてから、いとまを告げた。雑草の茂る空き地で廃墟をふりかえる。老人の霊は、20年前とまったく変わっていなかった。もう一度、礼を述べ、すこしだけ笑った。
 
 
※霊の存在を否定する霊の、有名な話があるらしいのだが、その作品名をぼくは知らない。いつか知るときがくれば良いのだけれど。