猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を書いた

雨があがるのを待ち、買い物から帰ってきたら。家がなかった。辺りを見回しても、やはりなくて。更地に、青空を映す水たまりがあるばかり。盗まれた、と思った。
てくてく歩き交番に行くと。お巡りさんはのんびりしたもので書類を作るでもなく、まず鍵屋に行きなさい、鍵はお持ちですか?と言われた。ポケットから家の鍵をとりだして見せ、どこの鍵屋に行けば良いでしょう、と尋ねた。お巡りさんは咳払いをして、引き出しから一枚のリストを取り出した。この中からご自分で選んでください、特定の業者を紹介することはしません、との事だった。
中央通りを引き返し、駅の中の鍵屋に入った。家が盗まれたのですが、これが家の鍵です、と相談すると。鍵屋さんは手渡された鍵を検めつつ、料金表を示した。安くはないお値段だった。出張費こみです、一週間ほどかかるかもしれません、と言われた。それから家の特徴を尋ね、私が答えに言い淀むたび、鍵屋さんは嫌な顔をした。盗まれたと貴方は云うが、ふつう家は盗まれません、とまるで私が悪いかのようだ。
途方にくれて家のあった場所に引き返すと、一匹の犬が前足で石を持ち上げ、地面に杭を打っていた。何をしているのですか、と尋ねると。ロープを張り地鎮祭をするのです、小屋を建てるにせよ、大切ですからね、と答えた。
ここは私の我が家があった場所です、これが鍵です、と云ったら。犬は石を地面を置き、何も言わずに走り去った。遠ざかる四本足の後ろ姿を眺めていると、さっきまで二本足で立ち話していた事が嘘のようだった。
 
 
 
凡庸な魔術師である私は、ピンクが好きだ。ほおにさす薄い薔薇色は、その下に健康な血潮を隠しているのだろう。女の首筋に牙をたて、流れだす真紅が好きって方もいれば。血の気も失せた屍体の紫を愛でる方もいれば。白骨の白に生涯を賭ける方もいる。色の世界も深い。
 
 
 
 
 

こんな句をよんだ

先日。もう去年のことだが。ひさしぶりにスキヤキを作って食べた。たぶん五年ぶりくらい。なぜ、こんなに間があいたのか。自分でも分からないけど。食べなきゃ食べないで、すんだのだった。……スキヤキは好きなんだけど、食べているうちに好きなスキヤキが、だんだんイヤになってくる感じがね、なんだか困る……と云う人もいた。
色々なスキヤキがある、とは思うのだが。個人的には。スキヤキの味というのは、お肉と砂糖と醤油の味だと思っている。砂糖と醤油で炒めて煮込めば、だいたい美味しいけど。その美味しさは、夜店のジャンクフードに近い気もするのだった。
もちろん上品なスキヤキもあるだろうけど。わが子供時代に慣れ親しんだスキヤキは、かなり大雑把な鍋料理だった。豚肉であることもあったし。わりと大人数で、勢いつけて食べていた気がする。美味しかったけど。時代は移ろい。もう大人数じゃないし、そんなに沢山は食べないし。
 
 清貧と卵とくなり牛の鍋 ><
 
 
 
 

こんな句をよんだ

そろそろ片付けましょう。って気持ちも働いて。おせちをつつきつつ、ビールを飲んだ。毎年、こんな感じ。
 重箱を丸ごと肴に五日かな
 
近所のお店を歩いたら七草セットというのが並んでいた。立ち止まり少し考えたが買わなかった。冷蔵庫には白菜やシメジや、あとお雑煮用に買った三つ葉もあったし。それらで代用しても、いっかな、と思って。
 七草や白菜三つ葉トントンと
 
今年はじめての燃えるゴミの日。早起きして道路を見渡したら、何時もより多めの袋が並んでいた。
 松過ぎて朝出すゴミの大袋
  
 
メモ
元旦、二日、三日、四日、五日、七日。ぜんぶ新年の季語。
http://www.longtail.co.jp/~fmmitaka/cgi-bin/g_disp.cgi?ids=19980104&tit=%8El%93%FA&tit2=%8BG%8C%EA%82%AA%8El%93%FA%82%CC
 
「七くさや袴の紐の片むすび 与謝蕪村
「増殖する歳時記」を読んでいたら、この句が紹介されてて面白かった。お正月の微笑ましい風景らしい。
 
  
 
 
  

こんな句をよんだ

除夜の鐘に耳を澄ましていた0時。夜空を叩く花火の音も響き。少し、びっくりした。何処かで、新年を祝うイベントがあったのだろう。
 年明けて東に花火西に鐘 
 
元旦の朝。起きるたび、毎年。「初夢はいつ」で検索してる。
 手揉みして話せば長い獏枕
 
 
 
 
 

こんな句をよんだ

買い物の帰り道。赤信号で止まっていたら、おばさん達の立ち話が聞こえてきた。……※※さんが倒れてね、※※病院に入院したって……あらまあ……って感じの話だった。
 暮れの街辻占いに救急車
 
湯呑みを洗おうとして蛇口をひねり、水流に手を近づけたら、バチッときた。大袈裟にひっこめた手を見て。うーん、って思った。
 水道の水にも走る静電気 
 
 
 

こんな句をよんだ

五年ほど前に建ったお宅が近所にあって。クリスマスの時期になると電飾で新築の家をに飾っていた。すごく気合が入ってる感じ。おお、って感心して見てたけど。今年はなかった。お父さんが少し疲れちゃったのかも、と思った。
 冬の家電飾消えて星明かり 
 
霧が出てた朝。近所を歩いたら。お日様はおぼろげで、車もゆっくり走ってた。家に帰ってお茶をいれて、シュークリームを食べた。
 白い息車もゆっくり冬の霧 
 
説明が難しい。っていうか、図にして示したい感じの事柄なのだが。お酒を飲んだ翌朝。おやっ、って思うことがあった。
 冬の朝パンツ腹巻のミステリ
 
「雪女」は冬の季語で天文に分類されている。面白い豆知識だと思う。でも「雪女」で詠む機会って、あまりない気もするのだった。
 ドア開けて唇冷たい雪女
 
 
  
 

こんな句をよんだ

昨日は玩具屋さんに行って、ゲームソフトを買った。……(ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島 !)……カウンターでプレンゼントソフトカタログっていう小冊子も貰ってきた。家に帰ってパラパラめくり楽しかった。
 
 お布団でカタログめくる聖夜かな ><

 
 
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ちょっととおりますよ
 
 
 
 

こんな句をよんだ

近所を歩いていたら、冷んやりしたお庭に赤い花が咲いていた。花弁が落ちていて山茶花だな、と思った。

 散歩道山茶花の散る日差しかな
 
 
冬の午後。ホームセンターに行き、洗面器を買った。帰り道。洗面器をいれた袋が電柱にぶつかり、音がお風呂場のように響いた。なんとはなしに趣深かった。

 電柱とコンと音なる洗面器 
 
 
冬になると静電気に悩むのだった。今朝はクリスマスの飾りを玄関に飾ざろうとして、指先に電気が走った。

 クリスマスリース握って静電気 ><
 
 
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今年の漢字
 
 
 
 

こんな話を書いた

四つ葉のクローバは淋しい。ひとつ見つけると、その近くで。どかどか見つかる。いっぱい、みつかる。五つ葉だって見つかる。そんな株を発見してしまうと、四つ葉の有難味も失せてくる。二十も三十も集めて、夢から覚めたような気分になってくる。沢山もっていても仕方ないし、誰かに贈りたくなるが。手渡す友達もいなれば、四つ葉のクローバは淋しい。
 
 
冬の傾きはじめた空に、伸びていく飛行機雲を見た。南の空を背に、銀色の翼が輝いていた。憧れはもう、ない。海原の向こうにも。雲の上の尖塔にも。となりには春めいた君がいて。握りしめた手があるから。

人はよく空を飛ぶ話をする。でもそれは間違いだ。魂は泳ぐ。泳ぐのが好きなのだ。遊泳派の詩人さんが、そう書いていた。私も遊泳派だ。夢の浅瀬をよく平泳ぎする。高くは泳がない。風が吹くと、怖いからね。
 
 
 
 
 

こんな話を書いた

冬の午後。昼寝から目覚め階段を降りると。玄関に知らない黒い靴があった。持ち主を探したが家中、静かで誰もいなかった。気のせいかと思いつつ玄関にもどると、知らない靴が二足に増えていた。湯船にもクローゼットにも誰もいない。玄関を見ると、黒い靴がまた増えていて綺麗に並んでいる。仏壇の蝋燭が灯り、ふいに。私が死んだのだな、と分かった。