猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

短い話

亡霊のしっぽ

夜。布団の中でひとつの思いつきをした。これは少し新しいぞ、メモしとかなきゃ、と思いつつ眠てしまった。朝、起きて忘れている。でも、ひとつのアイディアを忘れているということは覚えていて、それがもどかしい。 亡霊はいまも、ふわふわ浮かんでる。ぼく…

こんな話かいた

受話器をとると「もしもしAさんのお宅ですか?」と言われた。私はAではなかったので、「いいえ、違います」と答えた。でも相手は気にしなかった。「ああ、そうですか。まあ、いいです。壁の塗り替えのご案内で電話しました」 なんて大らかなヤツ! 夜道で…

説明がむずかしい

彼女についていえば。不思議な、風のようなひと、という印象なのだった。 たとえば…… 「たとえば、こんなことをいうと怒られるかもしれないけど」と前置きされて、こちらも身構えて耳を傾けると、「トマトジュースより林檎ジュースの方が美味しいよね」みた…

こんな話かいた

空の上から甘いものが降ってくる。多くの人がそれを話す。友人も空に手のひらを伸ばし、ほら、といって口に入れた。私も、それを認める。よかった。みんなにも、やっと見えたのだ。

こんな話かいた

二百年の時をこえ聖堂は完成したが市長は浮かぬ顔。どうも評判が悪いのだ。美しくはあるが装飾過多、重厚だが息苦しく、まるで重石のよう。それが市民の感想らしかった。建築的にも問題が山積。毎年の補修費もバカにならぬ。市長だってこう言いたかった。「…

8のまわりを歩いて

紫陽花の季節。連絡を受けホテルまで行ったが、すれ違いだった。フロントを離れてぶらぶら外に出てみると、小さなプールがあって、ふたつの丸をつないだ形をしていた。高い場所から見下ろせば数字の8に見えるだろう。その8の周縁をぐるりと回ってみた。水…

五叉路交差点

※※※公園まで遊びに行こうって話になって、Kと車に乗った。でも五叉路交差点の手前で、「あっ、まって、車を止めてくれ」と言われ停車すると「※※※公園まで行くならバスの方がいい」とKは云うのであった。Kはさっさと車を降りて歩き出す。ぼくも後をついて…

こんな話かいた

桜が咲くと彼女はひっこむ。花がどうした、というより人混みが苦手らしい。花が散って緑が映えて、また公園のベンチで彼女と会った。大変ですね、って言ったら「蒲柳の質ですから」とのこと。 風は強いが、いい天気。水たまりが輝く路上に、白い服の女を見た…

こんな話をかいた

風もない春の午後。桜の下をパンダが歩いていると、はらはらと舞う花びらが頭の上に落ちてきた。次の花びらも、次の花びらも、パンダの頭の上にのった。その様子は訓練された落下傘部隊さながら。花びらたちはパンダの頭の上が好きなようだった。

こんな話をかいた

失恋をしても、お茶は飲む。手にしたドーナツをまじまじと見て、パクリと食べた。ふと思う。ドーナツの穴はどこにいったのか?……虚空……失くした恋のモニュメントはそこかしこに満ち溢れ、ぼくの胸でもぽっかりと口を開けているのだ。あーあ。なんだか痛い。 …

こんな話をかいた

夢は灰色の余白。かつてはあったのかもしれない、なめらかな白の上に描かれては消されをくり返し、たわんで滲んだ薄い汚れ。光の下でも現れる、空の歪み。何度となく打ち消されつつ浮かび上がる、午後の亡霊なのだ。 病院に行って、しばらく待合室で時間をつ…

こんな話をかいた

ぼくは畑で産まれた。大きくなって収穫され、それから台所に行って中を繰り抜かれた。穿たれた2つの穴が目。口はw。家の玄関先に置かれ、星が瞬き夜がきた。ぼくの中ではロウソクが燃える。遠くに見える仲間たち。黒猫がきて挨拶した。ハッピーハロウィン。…

こんな話をかいた

足がない。どうやら私は死んだらしい。移動は出来るのだ。すーっと、摩擦なしに。右足左足を交互に出す必要もなく楽ちんではあるが。心臓も動いてないし、何だかリズムに欠ける。見ると「NO MUSIC, NO LIFE」というポスターが貼ってあって、納得しちゃった。…

こんな話をかいた

野原で初対面の蛙にこう言われた。「貴方は私についての本を書く事になるでしょう」僕はじろじろと蛙を見た。けれど蛙は自信満々。「これから冒険の旅に出て宝剣をゲット。私は蛙の王になります。貴方はそれを書くのです」僕は天を見上げた。「それで。その…

こんな話をかいた

満月の美しい夜。王室の厨房から兎印のお饅頭が消え、すぐさま百人の探偵が呼ばれた。そのとき厨房は完全な密室で、百通りの推理がなされたが、ついにお饅頭は見つからなかった。答えは月だけが知っている。つまり。。。犯人はお月さま。

こんな話をかいた

クローゼットを開けると棒氏がいた。棒氏は天上から下りてくる何かに抗いつつ、苦しげにこう言った。「ここは俺に任せて先に行け!」もちろん扉を閉めた 棒氏を説明するのは難しい。確かに対面したはずなのに記憶は朧気で、これという特徴も思い浮かばない。…

こんな話をかいた

夢の中で夢売りに出会った。夢は風鈴のように吊るされており、風が吹くと一斉に透明の音の響かせるのだった。ひとつの夢を手にとり指ではじくと、「このスランプを元手に世界一周!」という音がした。書けない作家の夢らしい。夢売りの夢って何だろう、とふ…

こんな話を書いた

悪魔なんかいない。良い天使も悪い天使もいない。白い天使と黒い天使がいるだけだ。白い天使と黒い天使は交互に手を結び、針の先には約八百億羽ほどの天使がのる。天国の門は針の穴ほどだが、天使たちはパレードして通る事が出来る。 彼女の世界は少し息苦し…

こんな話を書いた

亀はアキレスと争った亀でした。亀の能力、ゼノンパラドックスに囚われたアキレスはついに亀に追いつけませんでした。兎はこの事を良く承知しておりましたから、スタートダッシュに賭けたのです。亀の後ろにつかなければパラドックスも関係ないや、と考えた…

こんな話をかいた

「すべて想定の範囲内よ。不気味なくらいにね」そう言って女は量子銃をとりだすと男を分解した。女自身は気づいていなかったが、彼女の周囲には予定調和フィールドが発生しており、このフィールドに囚われた者は例外なく、予定調和的な行動しかとれなくなる…

こんな話をかいた

探偵は戦場にいた。彼の周りでは、ぼかぼか人が死んでいた。戦友が死んだ理由を考えても、詮なきことだった。銃弾がかすめ飛ぶ空を見上げ、探偵はため息をついた。平和な時代が訪れても僕は殺人と向き合うだろう。その死はガラス細工のように繊細なものであ…

こんな話をかいた

彼女を見ると苛々するという私に。Kは言った。「不機嫌になるために彼女を見てるとしたら君も馬鹿だね。ここで彼女への隠された好意を指摘したら君は怒るだろう。まあ優しい気持ちになりたまえ。僕も昔ね。水たまりを見つめる奴を見つけては、殴りたい衝動…

こんな話をかいた

檻を作り秘密を入れた。秘密は四角い檻の中を音もなく練り歩き、ときどき唸りを上げた。秘密は自らの内に秘密を宿し、危険が危ないって感じだった。檻は丈夫なはずだが。僕に出来ることは少ない。僕はサンダルを履き表に出て、玄関にプレートを下げた。「猛…

こんな話をかいた

影と喧嘩別れをした。私から離れた影はすぐに風に飛ばされ。ざまあみろ、と思ったが。私も無事ってわけではない。足が地につかないのだ。今、私は枯れ木の枝に跨り、夜空を見下ろしている。星の海に落ちる恐怖に足をすくませながら。 号砲さながらの雷鳴が轟…

こんな話をかいた

絵の中に置かれた絵の中で 白い人と黒い人が向き合い 隙間なく接しあっている 白い人と黒い人は嵌めこまれたタイルのようなもので 永遠のすれ違いが空間を埋めつくしている その絵から徐々に 白い人と黒い人が抜け出し 丸い窪みを回り 立体の世界で握手する …

こんな話をかいた

恵比寿町にはビール工場があって日夜、美味しいビールを大量に作っている。恐竜の団体さんがきても平気なほど。工場は巨大で全体に丸みを帯び、楕円の街のようで、その中央を鉄道は走っている。恵比寿駅のホームは、ビール腹の人で溢れている 眩しい通りで風…

こんな話をかいた

彼はずっと私は隣にいた。たぶん産まれた時から。私は公園で気づいた。強い日差しを避け木陰のベンチに腰掛けた時だ。少し離れた場所に黒い影は座っていた。私が彼の存在を認めたように、彼も私に気づいたようだ。徐々に我々は認め合い、近づくだろう。死神…

こんな話をかいた

蝉は夏っぽい。夏っぽいのは蝉の人生だ。長い長い時間、土の中で暮らし、木の根っこを食べて、その時がきたら、地表に出て羽ばたき、太陽の下で鳴く。セックスをするためにだ!まったく蝉ってやつは、 ……と麦藁の爺っちゃも言ってた。 そのコメディアンの芸…

こんな話をかいた

月夜の晩にボタンがたくさん、波打際に並んで落ちていた。帽子を被った影法師がやってきて、海の端を掴むとボタンで留めた。砂浜はずっとずっと遠くまで続き、ボタンもずっとずっと並んでいる。凪いだ海は、怖いくらいの静けさだ。 空き地の上に降った滝のよ…

こんな話をかいた

金魚鉢にのり夏の夜空へと降りると、星の影から巨大な魚たちがよってきて、ぼくを観察するとこう言った。「狭い場所に閉じ込められて、なんて可哀想な子。でもきっと。閉じられた場所にいることも分かってないのね」嫌味な魚たち。そして。すっごい余計なお…