猛烈な勢いでメモ ダッシュ

推敲してます。漫画とか。俳句とか。

こんな話を書いた

とある魔術書に。鵺が鳴く夜、猫より魂を戻す方法が書かれていた。猫に魂を入れて窮する者がいた、という事だろう。けれど猫に魂をうつす方法はどこにも書かれてなかった。昔の人にとっては記すほどでもない、よくある事であったのか。猫の瞳を覗き占う術も興味深かった。これも鵺が鳴く夜に行え、とあった。
 
悪い本も存在する。だが人が本が選ぶのだ。花の蜜に誘われた虫のように。人が本が開き、奥へと歩を進める。道は曲がっている。親愛なる読者よ。よく考えるがよい。その間に本は長い腕をのばし、背後からお前を捕まえる。パクリ
 
「気持ち悪い」
すれ違いさまに、また言われた。研究室の椅子に座り私は父に尋ねた。「親が呪いが子にうつりとは、どういう意味でしょう?」父は腕組みをして、呪いなどないと言った。「お前は科学の子だ。他人の述べる美醜など気にするな。私も造形センスが酷いって言われるけどさ。私は、かっこいいと思ってる!」
 
旅の途中、丘の上の城跡で火をおこし横になっていたら。折れた石柱の影から、首なしの女達が現れて、ふわりとした衣装をなびかせ踊るように駆けていった。続いて王らしき方が現れ、月光の反射する剣を手に女達を追っていった。次に女の首が飛んきて。最後に現れた猫は炎に近づくと、ゆっくりと背伸びした。
 
彼女と彼はつき合っていて、笑顔の親友がいた。親友の趣味は人間観察で、ひとつ気づいた。彼が好きなのは彼女の長い黒髪だってこと。しばらくして彼女は髪を切った。床に落ちる烏の濡れ羽色。髪色も軽めに。聞かれたから、いいと思う、と親友は答えた。今は親友が黒髪をのばしており、静かにお茶を飲むのだった。
 
金木犀の香る午後。家の前の通りでラッパの音がすると、誰もいない二階でピアノが鳴った。ラッパの響きは「眠ったピアノ引き取ります」というお知らせで。ピアノは「起きてますよ」って、寝ぼけているのだった。
 
金木犀。この季節になると彼女のことを思い出す。近づきがたい、というのではないけど。どんなに親しくしてもらっても、儚げに杳々として、きっと抱きしめても我らの距離が縮まることはなかったろう。溢れるような花を手にとっても、香りはどこか遠い。